物理学会2024年春季大会で開催された講演会で,聴きたかったけど聴けなかったもののプレゼン資料が一般公開されたので目を通してみた.
2024年春季大会企画講演:理事会・研究環境検討委員会共同提案 「我が国の研究環境の改善を目指して (~内閣府と学術会議の検討状況から~)」
その中の一つ,
(企画講演2)基盤的研究費として全研究者に100万円程度の個人研究費を一律配分する(40分)
相田 美砂子 (広島大学 特命教授・日本学術会議連携会員)
で提案されているものがいい.プレゼン資料だけだから分からないことも多いが,次のような主張なのだと読んでいる.
- デュアルサポート(基盤研究費+競争的資金)でもって,各研究者の個人の自由な発想と,その研究を遂行する環境を保つことで,国際的な競争力を維持する方針.
- しかしながら,基盤研究費(個人研究費)が少なすぎるため,研究の遂行や研究室運営が立ち行かないために,研究ができないという状況が起こっている(研究費格差が拡大している).
- このような状況を早急に改善するために,100万円程度の基盤研究費を大学の各教員に分配するべき.
しかしながら,このような提言は以前からなされていても,そのような政策は採用されず,このような状況は改善されないで現在に至っているとのこと.日本学術会議の存在も軽んじられているようだし,この提言が受け入れられてすぐに実施されるということはないのかもしれない.
ちなみに,このような社会実験がすでにどこかの国で行われていて,100万円程度の一律配分は生産性の面で成果が上がっている,という話を聞いたことがある(ソースなし).また,一律配分とは言っても当然だが全額均等配分ではない.国民(人類)が期待するのは凡人によるわずかな進展ではなく,類まれな天才によるブレークスルーであることは間違いないのので,そういう天才に集中投資するのは当然だろう.一方で,ブレークスルーを起こす発想がどこから現れるかは誰にも分からないため,広く浅く分配することも必要ということと思う.
他にも講演者が警鐘を鳴らしていることとして,アンケート調査の数が絶対的に足りない,特に私立大学などの十分なデータがないことが,現状把握を妨げ,改善の方針決定を困難にしているとのこと.今後はアンケート調査が回ってきたときに面倒くさがらずに協力するようにしよう.